愉快誘拐
第1章 何かの間違い
絶望の色が顔全体に広がる。
希望が消えた。そのせいで無性に体が震える。
「なんで、なんで俺なんだよ。ちくしょう。何かの間違いだろ、俺はお前なんて知らないし関係ないはずだ。なんで俺、他にも女とか俺以外にももっと扱いやすそうな」
ぶつぶつと不満を呟く。口でも動かしてなければ気を失いそうな勢いだった。
「あれ?大丈夫?」
いつの間にかそいつは目の前にいた。
すっと手を差し伸べてくる。
「…っさわんな…!」
差し伸べられた手をがっと払いのけ、そいつを押しのける。
少しよろめきながらもすっと立ち上がり、口もとに手を当てている。
払いのけた時手でも口に当たったのだろうか。俺にとってはどうでもいい。