秘密の兄妹
第1章 冷たいお兄ちゃん
……あっ、しまった……すっかり寝入ってしまった……。
おなかが空いているのに気づいて、俺は夕飯を食べに階段を下りた。
リビングでは風呂から出た紫織が、ワンピース型のピンク色の寝巻きを纏って、テレビを見ていた。
俺は深いため息をついて、テーブルに用意してある俺の夕飯を食べるため椅子に腰掛けた。
すると、紫織の携帯に電話の着信音が響いた。
紫織は携帯の画面を確認すると、嬉しそうに電話に出た。
「あっ、武部さん?」
……春樹?
「…今からですか?…ごめんなさい、もうお風呂に入ってしまったので無理です。」
紫織はテレビを消して、ソファーから立ち上がると、携帯を持ちながら2階の自分の部屋に上がっていった。
…気になる……
「…………。」
…っつ…、駄目だ!!春樹は絶対に駄目だ!!許さない!!
……でも、じゃあ誰だったらいいんだ……
「…ははっ!!答えは簡単じゃん!!…誰も駄目なら俺が奪えばいい……」
春樹のせいで、今まで崩れそうになりながら必死に耐えていた欲望が…堰を切ったように一気に放たれた。
俺は紫織のいる2階に上がり、静かに紫織の部屋のドアを開けた。
ベットの上に座って春樹と電話で話していた紫織は、突然自分の部屋に入ってきた俺の顔を見て驚いたような表情を見せたけど、すぐに笑顔になり電話切った。
「…春樹と何しゃべてた……?」
「明日が無理なら、明後日の日曜日に会えないかって…」
「で、どこに行くことになったの?」
「分からない。とにかく楽しみにしててって言われた。私が知らないような色んなことたくさん教えてあげるからって!」
……紫織が知らないような色んなこと…たくさんね……。
ものはいいようだな……
馬鹿な紫織……。
紫織のそういう無垢で無防備な綺麗な心をうまく利用する酷い男が世の中にいるとも知らないで……
…そう、俺みたいな酷い男がね……
「紫織…春樹が紫織に教えようとしていること、これから全部俺が教えてあげるよ……。」
「えっ?」