秘密の兄妹
第1章 冷たいお兄ちゃん
中学3年、春。
私はセーラー服の上にエプロンをかけて、いつものように朝食を作っている。
食事を作るのは私の日課。
お兄ちゃんと一緒に食べることはないけど、
お兄ちゃんは私の作った食事はいつも綺麗に食べてくれる。
だから、食事が唯一、お兄ちゃんと私を繋げてくれているツール。
私がお兄ちゃんにしてあげれることはできるだけしてあげたい。
お兄ちゃんの役に少しでも立っていると思うと、すごく幸せだから……。
お兄ちゃんは和食が好きだから、今朝はご飯に具だくさんのお味噌汁、
鮭の塩焼きに卵焼き、
それとほうれん草のお浸し。
健康を考えてバランスよく作っておく。
「できた!」
私はテーブルに自分とお兄ちゃんの朝ごはんを並べて一足先に椅子に座った。
お兄ちゃんのご飯とお味噌汁はよそらず、おかずだけラップで包んでおく。
「いただきます…。」
ひとり呟いて寂しく食事をする。
…お兄ちゃんは一人で食べて寂しくないのかな……
たまには兄妹仲良く2人で食べたいな……。
ガチャ!!……トントントン……
突然、2階からお兄ちゃんが下りてくる足音が聞こえてきて、私は朝食を食べるのをやめて階段に目を向ける。