複雑な恋のゆくえ【完】
第2章 手をとる/とらない
ああ、あなただけには。
――あなただけにはこんな姿見られたくなかった。
「そう……ですか」
空返事というやつ。
なんつーか、もう、アレ。
散々掻き乱しておいてさ。
押したら引いてみろ作戦かよ。
「立ち上がれる?」
優しく言った笑さんに、俺は泣きそうになった。
こんな可愛い人に優しくされて、惚れない人はいるのだろうか。
「春斗くんさ、いつも千秋ちゃんと帰ってるじゃん? 今日は私といっしょにかえろ」
俺の手を引く柔らかな手も、いつもと違ってとても優しい。
「……はい」
こんなとこ見られたら先輩たちに何言われるだろうとか考えたけど、まあいいかって思えた。