言葉で聞かせて
第8章 猫に恋敵
脳震盪を起こしたのか頭突きされた男はその場にズルズルと崩れ落ちた
「ひっ……ひいっ……」
三人目の男は俺と目が合った瞬間に怯えた声を出し、気絶した男を連れて走って行ってしまった
ったく
結局ビビって逃げんのかよ
あーーもう
不完全燃焼だわ
若干イラつきながら振り返ると、カツアゲされてたちっちぇえ少年は震えながら俯いている
「じゃ、俺行くから」
「あっ……あのっ……」
「あ?」
「ありがとうございました……っ」
泣いていたから目は潤んでいて、顔も真っ赤で
それでも感謝の意を伝えてくるあたり良い奴だ、という単純な考えから俺はふっと笑みをこぼした
「おう。気をつけろよ」
歩きながら腕時計を見ると待ち合わせの時間ギリギリ
「やっべ」
場所はもうすぐそこだ
走りゃ間に合う
俺は駆け出した
「悪い。ちょっと遅れちまった」
「もー!遅いよぉ」
「悪い悪い。いやでも聞いてくれよ。俺人助けしてきたんだぜ?」
「えぇ?ほんとー?」
「今日はちゃんと遅れた理由があるんだって」
「そうなの?じゃあ聞かせて?」
クスクス笑いながら俺の話に耳を傾けてくれたことにほっとしつつ店に向かった