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言葉で聞かせて

第8章 猫に恋敵


「めんどくせぇな」


森君が泣き出したことに対してイラついた敦史が吐き捨てるようにそう言った


確かに森君が悪いけど
それはないだろ
態度悪すぎ


「こら。泣かせたの敦史でしょ」
「チッ……」


僕が叱ると敦史は舌打ちしながらポケットを漁る

そしてとりだしたハンカチで森君の目元を拭った


「わわっ……!?」
「これは客用なんだからな」


ごしごしと少し乱暴に拭ってから敦史は僕の方を見る


ーーこれでいいんだろ

ーーお利口さん

ーーくそ


森君がもう涙を流していないことを確認すると敦史は踵を返して行ってしまった

それを呆然と見送る森君に僕は声をかけた


「ごめんね。弟が」


すると森君は何故か僕の方を睨むように見た
そして


……?

少し、睨まれた?


「……いえ。別にあなたのせいじゃないです」
「?」


どうしたんだろう
僕なんか変なことしたかな


と考えていると森君が口を開く


「あのっ!流星さんとせーーー」
「聖夜さーーん!おはよーー!!」
「わっ」


森君の言葉を遮って後ろから僕に抱きついてきたのは


「楓くん?」


僕が振り返ると顔を上げて楓くん、本名内藤くんはにこっと笑った

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