
言葉で聞かせて
第11章 記憶
メールの受信日と携帯に表示された日付を何度照らし合わせてみても真菜さんの言う『明日』は今日ではない
どうしよう?
どうしよう!?
謝らなきゃ
倍払うから二人には見せないで
だめだから
どうしよ
とにかく行かなきゃ?
思考は支離滅裂で、朝どうして二人に抱き締められていたのかなんて考えはもうどこにもなくて
僕はとりあえず外に出られる格好をして財布を握りしめて部屋を出た
玄関へと続く廊下に差し掛かった時、突然いなくなっていたら二人が心配するかな、とか別れを告げたくせに心配して欲しいなんて勝手な考えが浮かんで置き手紙を書いて机に置く
「……」
よし、行こう
今は感傷に浸ってる場合じゃない
走ってマンションを出て、丁度側を通りかかったタクシーを止めた
「駅前の銀行までお願いします」
運転手さんに最寄駅の銀行名を伝えると、タクシーは滑るように動き出す
その間に携帯のアドレス帳から真菜さんの名前を呼び出して電話をかけた
プ、プ、プ、プ、と音がしてから呼び出し音に変わると思った音は何故か「この番号は現在使われておりません」というアナウンスに変わってしまった
どうして?
繋がらない
