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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


平然と客の一人と話し始めた悠史を目で追っていると、もう一人の客に話しかけられた


「どうしたの?流星」
「あー……いや、なんでも」


違和感の正体わかった
悠史の表情が固いんだわ

なんかあったか


しかし今は仕事中、と俺は客に集中する


「この前来た時言ってた友達とはどうだったんだ?」
「その話をしに来たのよ。あの後ねーー」


双子で使命がきたとは言え、二人で来た場合はだいたいもう一人の客と話す機会はない


まぁ、狙いは決まってんだろうし
仕方ねえけど


結局次の使命の声がかかるまで悠史と話すことは叶わなかった


「ご馳走様でした」
「じゃあな」


俺たちが席を立って、普通に「またね」と手を振っている大人しい客を見送って、小さな声で僅かな会話をする


「なぁ、なんかあったのか?」


悠史は俺の言葉だけで何が言いたいのか理解したらしいが、特に何も言わず「ううん」と首を振るだけ


「そう、か……」


何もないなんてそんなわけない、と思いつつも何も問い詰める言葉が浮かばず引き下がろうとすると、悠史が耳元に顔を寄せてきた


「あ?」
「今日、アフター行かないで。終わったら話、ある」


離れた悠史の顔が僅かに険しくて、訳も分からないまま俺は頷いた

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