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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


歩きながら悠史になんて声をかけようかと考え続けたが、あの目は何を言っても聞かない目だってのが経験上分かってて


くそ


家に着くまで何も考えつかなかった


悠史とあの女が籍を入れる前に何とか阻止出来りゃいいよな?


そんな考えに及んで、何で同棲するまでは許容してるんだ、とゾッとした


「ただいま、千秋さん」
「おかえりなさい」


家に帰って千秋に話しかける悠史はいつもと変わらない

その変わらなさも、悠史の決断への意志の硬さがうかがえる


妊娠を言われた瞬間はすげぇ顔してたのにな


飯食って、風呂入って
千秋が風呂に入っている間に俺は悠史の部屋を訪れた


「悠史」
「敦史。なに?」


扉を開けた悠史の部屋には段ボールがいくつか置いてある

それを見て、気管が閉じた気がした
息が上手くできない


「あ…………本当、に……行くのか?」


やっとの思いでした質問に、悠史は穏やかに微笑む


「うん。行くよ」
「……別にあの女のこと、好きなわけじゃねぇんだろ?千秋のことが好きなんだよな?なら……」


行くな
妊娠が何だよ
どうにでもなるよそんなもん


そう言おうとした俺の言葉を悠史が遮った

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