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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


「僕は………僕はやっぱり、女性の方が好きだよ」
「……」


は?
今更、何言って


「ずっと思ってたんだ。確かに千秋さんのことは好きだけど、それは本当に恋愛感情なのかって……」


悠史の顔が憂いを帯びる


「それで、ここ最近考え続けてわかったんだ。やっぱり僕が愛してるのは女性だよ。千秋さんのことは家族以上には思ってない」


また俺は何も言えなくなって悠史の顔をただ見ていると、その顔がふ、と笑顔になった


「それにね?自分の子供がいるって思ったら急に、愛しく思えてきちゃって……だから僕、エリカさんと結婚することにしたんだ」
「……っ」


ゴッ、という鈍い音がした

俺の、握りしめた拳が熱い


悠史を殴ったんだと自覚した途端に顔まで一気に温度が上がる


「最低だ。お前…………早く出ていけ」
「……」


俺は悠史の部屋を後にして自分の部屋へ戻った
行き場のない怒りをそのままに布団を殴って、倒れるように横になる



くそ
わかってただろうが
あれが悠史の本心じゃないことぐらい

なんで殴ったんだよ、俺

手が痛ぇ
頭も、目も

身体中が痛ぇ



あいつは
「痛い」って言わなかったな

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