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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


千秋の様子を見て、あぁこんな損な役割引き受けるんじゃなかったな、と激しく後悔した

俺は呼吸を落ち着けるために息を深く吐いて、千秋の肩をぐっと持って引き離す


「千秋、よく聞け」
「!」


俺の目を見た千秋が息を飲む
何かを感じ取ったんだろう



「悠史は…………結婚して、この家を出た」



俺の言葉に、千秋が目を見開く


「え…………?何、言ってるんですか……昨日まで、この家に……」


千秋の震えが大きくなった

そして、一気にその身体から力が抜ける


「……っと……」
「嘘ですよね……?」
「嘘じゃない。あいつは、女と結婚してこれからはそいつと暮らすんだ」


千秋の見開いた目から、涙が溢れた


「どうして……?……僕のこと、嫌いに……なっちゃ……っ」


聞きたくねぇ
聞きたくねぇ


俺は千秋を抱きしめ直した


嫌いになんかなってねぇよ

あいつはきっと何かしらの理由があって仕方なくあの女の元に行ったんだ

俺がちゃんと理由を見つけ出してやれば帰ってくる



だから、泣かないでくれ

そんなに泣かれると俺だって泣きそうなんだ



「大丈夫だ。千秋」
「ぅ……ふ、ぁぁ……っ、く……あつしさ……っ……」
「……」

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