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言葉で聞かせて

第13章 言葉で聞かせて


三崎さんに言われた通り名前と会社名、病院名を書いて渡した


「ん」


それを三崎さんがそのまま佐伯さんに横流しする

佐伯さんが「はいはい」と受け取って、それを見ると


「あら」


と声を出した


「どうした?」
「この会社ね…………ふーん………」


意味ありげなことを呟いた佐伯さんはしかし、何でもないと微笑んだ


「話は、それだけですか」
「あぁ」
「じゃあ、店に戻ります。失礼します」


俺が事務所を去ろうとすると何故か話は終わったと言ったはずの三崎さんに呼び止められる


「敦史」
「はい」
「……前は、悪かったな」
「前……っすか」


聞き返した俺に「わからないならいい」と三崎さんが背を向けたので、俺は何も言わずに事務所を出た


前?
前ってなんだ

俺三崎さんに謝られるようなことしたか?


頭を捻っていると、ポケットの中の携帯が震える

確認してみるとそれはメールで、差出人は千秋になっていた



『今朝は取り乱してしまってすみませんでした。』


その文面を見て、息を吐く


まぁ、心中はどうか知らないがそこそこ落ち着いたってことか
良かった


と考えて、三崎さんが謝ったことがわかった

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