
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
エリカはコップを一つ取ってさっき俺が呑んだ酒を注ぐ
「だって、お兄ちゃんとられちゃって寂しいんでしょう?近くにいないと心配で、夜も寝られないんじゃない?」
クスクスと笑いを漏らすエリカは俺の方にコップを押して、「どうぞ」と一言言ってから、また俺の方を見た
その目が
楽しんでやがる
明らかに俺とのやり取りを面白がっていて、テーブル蹴り倒して頭から酒ぶっかけてやりたい気分になる
抑えろ
三崎さんと佐伯さんに迷惑かけんな
エリカは俺の様子を見て、更に笑みを深める
「意外とブラコンなのね?敦史って」
「……っ」
どういうことだよ!と叫ぼうとしたその時、黒服が俺の足元に跪いた
「流星さん、ご指名です」
「……」
「あら、残念。もっと話したかったのにな」
クソ女
やっぱり悠史がいなくなるにしても、こいつの側にはやれねぇよ
無言で席を立った俺は、良いタイミングで呼びに来た黒服に礼を言った
あのままだったらいつか殴ってた
「いえ、本当に指名入ってましたし、三崎さんの指示なんで」
「……そうか」
ちゃんと見ててくれてたのか
俺はママの判断力に安心感を覚えながら、次の席に向かった
