
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
僕は深くため息をついた
するとそれを見たエリカさんが悲しそうに眉を下げる
「だって…………悠史……仕事行くでしょ?そしたらまた私以外の女の子に優しくするんでしょ?そんなの嫌だよ……」
語尾の方は声が少し潤んでいる
演技なのか本当なのか
考えるのも疲れちゃったな
「僕、ホスト辞めたんですよ?」
僕の言葉にエリカさんの肩が跳ねる
「え……本当?」
「えぇ。本当です」
「エリカのために?」
肯定、したくない
別に貴方のためじゃない
僕は誤魔化すように微笑んだ
エリカさんはそれを肯定だと受け取ったらしく表情を明るくさせる
「嬉しい……!!じゃあ私、悠史の分ももっともっとお金持ってこなきゃね!」
お金『持ってこなきゃ』なんだ
自分で稼ぐ気はないってこと?
「そうですね。いつか驚くほど高額なものを僕が欲しがるかもしれませんし」
「え〜なぁに?何か欲しいものがあるの?」
問い詰めようとするとエリカさんを「内緒ですよ」と流しながら
お金じゃ買えないものが欲しい
なんて
言ったって無駄でしょ
と考えて、針が刺さったような僅かな心の痛みに耐えた
