
言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
敦史さんは悠史さんと膝が触れるほど近くに腰を下ろす
えっ……
僕が座る床がない
お姫様抱っこみたいに抱き上げられていた僕のお尻の下には悠史さんと敦史さんの太ももがあって、僕はそこに座らされた
「千秋さん、好きです」
「千秋、好きだ」
身体の左右から抱きしめられて、こんなに広い家にこんなにぎゅっと固まってるなんて、って笑いがこみあげてくる
心が、熱くて
涙が出そう
2人の愛で身体が満たされて
このまま死んでもいいって、本当にそう思った
「僕も、2人のことが大好きです」
どうして2人同時に抱き締められないんだろう
1人になったら寂しいのに、1人分に纏まってくれないかな、なんて思う
そんなことできるわけないよね、と僕は小さな腕を精一杯伸ばして2人の首を引き寄せた
「愛しています……ずっと」
「俺もだ」
「僕もです」
僕は小説家で
これまでたくさんの文章を作ってきた
なのになんで、こんなに見つからないんだろう
2人に対する僕の気持ちを表現するこ言葉がどうしても、見つからない
好き
大好き
愛しい
愛してる
どれもだめ
どれも足りない
僕にもっと語彙力があれば、とかそういう問題じゃなくて
世界中のどんな言葉でも表現できない
世界で誰も、こんなに人を愛せないだろうって確信してる
だからこの思いを表現出来る言葉が
3人で一緒に、死ぬまでに見つけられればいいな
