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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第5章 ~試験飛行~

その日のナオトはハンズィ隊長を相手にドッグファイトを行った

いわゆる“鬼ごっこ”だ

範囲は“空すべて”

シュミレーションシステムを併用して実戦さながらの追走劇を展開する

システム上の仮想銃火気を打ち、鬼を撃墜する

ナオトが追走し、撃墜すると鬼が変わり今度は回避運動をする

ノンストップの訓練だったが、おかげで機体のコントロールに慣れてきた

帰投したときナオトはクルマ酔いのような状態だった


「お前よく乗りこなしてるじゃねぇかッ!機体が空中分解する前にお前が分解しちまったな!特にストップ・アンド・ゴーはシンシア並みのクィックだったぞッ!」

「そ、そうですか…オェッ…、昨日散々シンシア隊長にやられましたから…」

「…言っとくが、アイツの動きに合わせてたら非常時に動けなくなっちまうぞ…」

昼からはメカニックチームとの調整作業を済ませ、予定通りナオトは医務室へ向かった


「失礼します!」

入室したもののナオトを治療したふくよかな女医の姿は無かった

奥のベッドスペースには10数基のベッドがある

奥のほうにシンシアの姿があった

両手が包帯でぐるぐる巻きにされている


「お前、訓練はどうしたんだ?」

「今日はハンズィ隊長と組みました…、さっきメカニックに調整をお願いしています、あとはシンシア隊長のフォローを指示されましたッ!」

「フォロー?」

「なにかご不便があればおっしゃって下さい!」

「…」

「…」

「…別に不便など無いがな…」

「…そうですか」

「…」

「…腕のケガ…どうされたんですか?」

「…」

「…」

「…新兵器の演習だ」

「…新兵器…」

「<ブリッツ>の簡易兵器だ、ライフルのように携帯する…放電のフィードバックがコクピット内まで放電したんだ」


どうやらその放電事故でグリップを握っていた両手が痺れているらしい

もしかしたら感電、火傷のような症状かもしれない

幼く見える上官は少し落ち込んでいるように見えた

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