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missing☆ring【完】

第6章 最期の時。

「なにそれ……」



小林に言っても仕方ないのに。



「私は女で、陸は男じゃん」



小林を叩いても仕方ないのに。



「……好き、陸のことが好きだったのに。そんなの、勝手じゃん」



小林に伝えても仕方ないのに。



それでも「ごめん」と小林は受け止めて謝ってくれる。



分かってる。
誰が悪い訳でもない。
陸が病気になったのも、
それを黙っていた小林や典幸も、




「裕実……」とそんな私の肩を綾子が抱き締めてくれる。
そして優しく背中を撫でてくれた。



私は綾子にすがって泣いた。
「陸」と何度も居ない陸を呼んだ。



分かってるけどやりきれない。
もしあの時にそれを知っていたら、私は陸に想いを伝えただろう。
陸が死んだと分かっても、こんな気持ちにはならなかっただろう。



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