テキストサイズ

missing☆ring【完】

第5章 1年前。

信号が青に変わりまた車がゆっくりと走り出す。



アパートの前に陸が車を停めエンジンを止めた。
















"大好きだよ。陸"


私は心の中で呟いて、右手の指先でmissing ringを作りその欠けている輪から笑顔で陸を見つめた。



陸もそれに笑って答えてくれた。



車を降りる時に「部屋に入るの見届けてから帰るから」と陸が言う。



私が陸を見送りたかったのに。
私は頷いて車を降りた。
そして、膝を屈め車の中に居る陸に手を振った。



陸も軽く手を上げる。



陸の視線を背中に感じながら私は階段を上り部屋の前で、もう一度陸に手を振った。



だけど、此処からじゃ、陸の顔も見れない。
けど……。
私はドアを開け玄関の中へ入った。



エンジンの掛かる音が聞こえる。
その音に涙が溢れた。
私はそのまま玄関先に座り込み、





陸。
陸。





と何度も叫んで呼んだ。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ