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missing☆ring【完】

第5章 1年前。

陸はまた切ない笑みを浮かべ、私の頭をポンポンと触れて車を走らせた。



何も言わせてくれない。
何も聞かせてくれない。



無言で車は走る。
窓の外は日付が変わっていると言うのに、まだ光を放っている。



車は見慣れた街並みに戻って来た。



私は車を降りる時に何て言えば良い?


"ありがとう?"

"楽しかった?"

"またね?"

"バイバイ?"



涙が出そうになるのを誤魔化すように、ずっと窓の外に視線を向けていた。



アパートの近くの信号で止まった。
その時に、窓硝子越しに陸と視線が合って「やっぱり、俺の相手は裕実だと思ってるから」そう切なく笑う。



陸を直視出来ないのは、陸の笑顔が切な過ぎるから……



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