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暗闇で恋しましょう

第4章 それは手の届かぬ場所に

あの夢は........




私の、記憶でーーー




もう届かぬ場所に、あるもの。



「.......暑い、暑い、夏の夢だよ」



にこりと笑い掛ける。


同時、ひぃちゃんの視線が私を捉える。


怒っているのか、疑っているのか、警戒しているのか.....


何れにせよ、どれを取っても楽しいものではなかった。



「本当だよ。だから、汗もぐっしょり。ね?」



ひぃちゃんの頬に手を添える。


こんなに暑いのに、ひぃちゃんのそこはひどく冷たくて。


このまま消えてしまいそうと不安になる。


その不安をかき消すため、どうにか温めようともう片方も添えようとする。


しかし、添えていた手が払われ、それは不必要なのだと言われた様で。


少し、寂しい気持ちになりながらも、大人しく従い、ひぃちゃんと距離を取る。



「.......晩飯の、食材、買ってくる」



読んでいた雑誌を置き、静かに立ったかと思えば、行ってらっしゃいの声も待たずして、ひぃちゃんは家から出て行った。



.....バカだなぁ。ひぃちゃん



私の手の届かない場所にあの世界を置いたのは、貴方で、そんな世界に慣れさせたのも、貴方。


そんな貴方の言動で一喜一憂している私が、何故またあそこに戻りたいというのでしょう。


その想いは、未だ言えぬまま。

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