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いつか手をつないで歩こう

第10章 訪問者


俺は叔母をリビングへ招き入れ、向かいあって座った。


「久しぶりねぇ浩ちゃん。何年ぶりかしら?」


「俺が高校に入学して以来ですから、5年半ぐらいですね。あ、その節はほんとにありがとうございました」


「おっほほほ。いいのよ、そんなことは」


叔母は部屋を見渡すと、感心したように言った。

「きれいに片付いているわね。どこもかしこもピカピカじゃないの。美雪ちゃんは、しっかりしたいい女性に成長したのね」


俺は突然訪れた叔母に戸惑っていた。


「浩ちゃん、来年はいよいよ就職ね?」

「はい」


「そうしたらあなたはもう、ここから出て独り立ちしなさい」


「えっ、何のことですか…?」


俺は叔母の言葉がすぐには理解できなかった。


「浩ちゃんも美雪ちゃんもいいお年頃なんだし…こんな狭い所では、お互い窮屈でしょ?」

ドクッ、ドクッ

「いえ、別に…」


ちょっと待ってくれ。
つまり、美雪と別々に暮らせって事か…?


「知り合いにいい不動産屋さんがいるの。叔母さんが頼んでおいてあげるわ」

「…」


俺は言葉もなく、ただ叔母を見つめるばかりだった。

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