テキストサイズ

Fallen Angle

第2章 in

閑静な住宅街を走らせてマンションの前でタクシーを停め、動こうとしない結を抱えて部屋のチャイムを鳴らすとドアが開き、中に入ると女に迎えられた。
「結?」
コートの襟を掴んだまま顔を埋め、降りようとしない結を見かねて女が手を伸ばし
「ほら、おばちゃんの所においで」
剥がすように結を委ねると、恨めしそうに蓮を睨んでいる。
「いつもすみません。これ着替えが入ってるので」
トートバッグを玄関に置くと
「いつもちゃんと持たせて下さいね」
刺のある言い方に愛想笑いを向け
「はい…」
会釈してドアを閉めると、漏れてくる結の泣き声。
振り返らずにタクシーに乗り込むと歓楽街に向けて走らせた。
薄暗い車内でコンパクトを開き、濡れたようなグロスを重ねた。
バーの前で降りて中に入ると、グラスを片手にバーテンと楽しげに話す莉那の肩を掴んで
「お待たせ。遅くなってごめんね。託児所に寄ってて…」
振り向いた莉那の柔らかな髪の甘い香りが鼻を擽る。
「遅いから開けちゃったよ。でも結ちゃんって駿くんが面倒みてるんじゃないの?」
不思議そうに見つめる目に
「…ちょっとね」
目線を逸らしてカウンターの隣に座ると、グラスが目の前に並びワインが注がれる。
「もしかして駿くんと喧嘩した?」
「…そんな事ないよ」
グラスを手にすると誤魔化すように
「お疲れ」
小さくグラスを合わせて一口。
「そうだ。もう直ぐ蓮の誕生日じゃない?お祝いしようと思うんだけど、どう?」
「いいよ…気持ちだけ貰っとく」
「せっかくホテルのスイート予約したのに?」
「え?何で?」
ばつの悪そうな顔の莉那と目が合い
「あ…さてはまた彼氏の都合でキャンセルされたとか?」
「バレたか…」
鼻先を擦って小さく笑った。
「でも、ホテルをキャンセルするの勿体ないからそこで誕生日お祝いしようよ」
腕を絡めて引き寄せると莉那の柔らかく膨らんだ胸の谷間へ押さえつけられ
「ね?」
至近距離で覗いている目に面倒くさそうに
「…分かった」
腕が離れると満面の笑みを浮かべて
「じゃあ決まりね」
華奢な時計が目に入り、慌ててワインを飲み干すと
「もう行かなきゃ。ごめんね」
席をたち莉那に手を振ると店を出て行った。
蓮の背中を見送ると莉那はバーテンに手招きして耳元で囁くと
「ほんとそういうの好きだな…でもあの子なら申し分無いよ」
「でしょ?」
小さくほくそ笑んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ