テキストサイズ

Fallen Angle

第3章 car

広い駐車場に車を停めて重い足取りで水族館の入り口に向かって歩いていく。
「いるかー」
二匹のイルカが跳ねるパステルカラーの看板を結は指差し、蓮のパーカーの裾を引っ張る。
「ちょっと…」
「ほら、蓮も手を繋ごうよ。ね?」
笑顔に負けて仕方なく手を繋いだ。
手を揺らしながら歩いていき、中に入ると結の体を挟むようにしてエスカレーターに乗った。
硝子張りのトンネルに目を奪われる。
魚の群れが泳ぎ、まるで海の中にいるように錯覚する。
エスカレーターを登りきり水中を進むように硝子張りの壁を伝いながら足を運ぶ。
近づく大きな魚に驚いて、結が悲鳴をあげる。
蓮の脚に絡みつき
「こわい…」
「ちょっと…唯?」
「唯たん抱っこしようか?」
小さく何度も頷いて抱きつくと、駿の首に絡みついた。
照明が暗くなると深い青の中に漂う幻想的な海月の海に思わず声が漏れる。
大きな水槽の前に行くと愛くるしく近づいてくる白イルカが水中に丸い輪を広げていく。
「まま、みてっ」
抱きついていた駿の腕から強引に下りて、ガラスにへばりついて指を差してはしゃいでいる。
結が手を振ると応えるようにイルカが回転する。
「結?行くよ?」
「…うん」
何か言いたげな顔で後をついてくる。
青い空間から抜けて出口が近づくにつれ現実に引き戻されていく。
小さな体が人の波を縫い、ぬいぐるみ目掛けて駆け出した。
「ちょっと待って」
追いつくと、いつの間にか大きなペンギンのぬいぐるみを抱えて満面の笑みを浮かべている。
「だめだよ。家にもあるでしょ?返してきて」
ぬいぐるみの山を指差すと結の顔が歪んで首を振りその場から動こうとしない。
「蓮…せっかくだからお土産くらい買おうよ」
「でも…」
駿は屈んで唯の目線を合わせると
「結たん、小さいペンギンさんにしようね?」
優しく頭を撫でた。
「…うん」
渋々手放して言われるまま、渡された小さなペンギンを抱えた。
支払いを終えると再び手を繋いで車まで歩いていき、狭いリアシートにぬいぐるみごと唯の体を沈めた。
蓮が運転席に乗り込むと駿に
「夕食どうする?」
「ファミレスでいいんじゃないの?結たん喜ぶと思うよ?」
返事もせずエンジンをかけタバコを咥えると火をつけた。
マフラーの低い音を響かせながら海沿いを流すと傾きかけた太陽がボンネットを赤く染める。
リアシートからは小さな寝息が聞こえてきた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ