恋愛妄想短編集【完】
第2章 偶然と必然 [完]
コンコン…
「おはようございます。失礼します」
ガチャッー
私はサクラ。
ホテル業務の職についてやっと一年が経った。
今はその仕事をしている最中だ。
「ベッドのシーツ剥がして、ついでにバスタオルとかも持ってっちゃおう」
お客様が部屋にいない時間帯に清掃をこなす。
日々効率の良い手順を探しながら行うこの仕事は、大変だがやりがいもあった。
使用済みのシーツとタオルを片付け、新しい物を持ってくる。
それを広げシワを伸ばし、手際良くベッドメイクを完成に近づけていく。
「よし、最後にベッドスローを…と、完成!」
これで部屋の全てが決まる、と言ってもいいベッドメイクを満足がいく形に整え、お風呂場へ向かう。
三点ユニットバスのため、洗面台とトイレの清掃も一緒に行う。
お風呂場の扉を開けっぱなしにして、さあやるぞ!と意気込んでいた。
ガチャッー
ん?
パートの人かな?
呑気にそんなことを考える。
が、いくら待ってもなにも応答がなかった。
「どうかされましたー?」
痺れを切らし、私は自分から声をかけた。