恋愛妄想短編集【完】
第1章 近すぎた想い [完]
「あーくそ、なんだってこんな暑いんだ」
人の家の床に転がり、扇風機の首を固定して、風に当たり髪をなびかせる。
「そりゃ夏だからね、タケルのその無駄に長い髪じゃ暑いだろうね」
幼馴染のタケルは、男のくせに鎖骨まで伸びていて見ているだけでも本当に暑苦しい。
その点、私の髪は鎖骨にも首にもかからないベリーショート。
しかも天パのため、いい具合にまとまっている。
「アキ、お前は暑くないわけ?クーラーつけろよ」
真夏の、しかも昼間にこんな暑苦しい部屋にいるのだから、誰でも疑問に思うだろう。
けれど私は「クーラーは喉に悪い」と、その提案を却下した。
私は大学が休みの時、バンド活動をしている。
バンドではボーカルを務めているため、喉を壊すようなことはしたくなかった。
ちなみにメンバーは男三人に女一人。
一般的に見れば、女の私がかなり浮いたようなメンバーに思えるかもしれない。
また、同じメンバーの私が言うのもなんだが、結構顔のいい奴が揃ったと思う。
女受けの良さそうな。