恋愛妄想短編集【完】
第1章 近すぎた想い [完]
「しかもお前なんだよその格好」
頭から足までジロジロと見てくる。
なにって言われても…
「部屋着だけど」
たんたんと答えた私を、軽く睨みつける。
「なんでボクサーパンツにタンクトップなんだって話しだよ!男の前で!それでも女か!」
最近ボクサーパンツの快適さに気付いたばかりの私。
だからタケルは、タンクトップ姿は見たことがあってもボクサーパンツ姿は初だった。
「いーじゃん、サービスショットだ」
ふざけて言うと「アホか!お前の下着姿なんか見飽きたし見たくもねーし!」と結構本気で怒鳴られてしまった。
なんでタケルに怒鳴られなければいけないのさ。
だいたい男の前とかなんとか言ってるけど、勝手に家に入ってきたのはタケル。
「イケメンが来るって事前にわかってたら勝負下着でも着けてるわ」
だからお前が来るくらいならこれで十分だ、と反撃してやった。
「…もういいわ。これだから男と間違えられんだよ」
いつもこんな調子だから女一人のバンドも、そう思わせないくらいバランス良く成り立っていた。
「いやまじ無理。クーラーつけるぞ」
私が却下したのをなかったことにして、我慢の限界が来たタケルはクーラーをガンガンにつけだした。
長いこと使われていなかったクーラーは、音を立てながら一人暮らしの狭い部屋の中を冷やしていく。