俺が教えてやるよ。
第2章 あの性悪女(しょうわるおんな)
―蘭斗side―
「あの性悪女…」
今は使われていない、旧校舎1階の一室。
ここはある種の不良が集まる溜まり場ではなく、運動部の元部室。
使われなくなってからも、部屋の中はそのままだから、人知れず過ごすには都合がいい。
違和感があるとすれば、ソファがあることくらい。
ソファを置いたのは、もちろん俺。
この校舎はあまり人も来ないため、ソファを運び入れるのは簡単だった。
ため息をついて、座り慣れたソファに腰をかける。
「何か言ったか?蘭斗」
誰かの声に顔を上げると、グラウンドの裏に続く大きな窓から、眩しいほどの光が差し込んで、思わず目を細める。
そんな俺に、窓の外から話しかけるヤツがひとり。
武中 陽(たけなか ひなた)
「別に、なにも」
「なにもってことはないでしょ。蘭斗が学校で、裏の顔出すなんて珍しい」
ははっと陽が笑う。
…そうか?
「そんなことねぇだろ」
「あるね。だから女の子はみんな、お前を王子だと思ってる」
部活のユニフォームに着替えた陽が、器用にサッカーボールを指で回すのを見ながら、俺はテーブルに置かれたミネラルウォーターのペットボトルに手をかけた。
「あの性悪女…」
今は使われていない、旧校舎1階の一室。
ここはある種の不良が集まる溜まり場ではなく、運動部の元部室。
使われなくなってからも、部屋の中はそのままだから、人知れず過ごすには都合がいい。
違和感があるとすれば、ソファがあることくらい。
ソファを置いたのは、もちろん俺。
この校舎はあまり人も来ないため、ソファを運び入れるのは簡単だった。
ため息をついて、座り慣れたソファに腰をかける。
「何か言ったか?蘭斗」
誰かの声に顔を上げると、グラウンドの裏に続く大きな窓から、眩しいほどの光が差し込んで、思わず目を細める。
そんな俺に、窓の外から話しかけるヤツがひとり。
武中 陽(たけなか ひなた)
「別に、なにも」
「なにもってことはないでしょ。蘭斗が学校で、裏の顔出すなんて珍しい」
ははっと陽が笑う。
…そうか?
「そんなことねぇだろ」
「あるね。だから女の子はみんな、お前を王子だと思ってる」
部活のユニフォームに着替えた陽が、器用にサッカーボールを指で回すのを見ながら、俺はテーブルに置かれたミネラルウォーターのペットボトルに手をかけた。