テキストサイズ

チェックメイト

第2章 君の体温 乗せて

ニ「嫌だっ、離して!離して!」

俺の体を無我夢中で叩いた。

「二宮!落ち着け、大丈夫だ」

ニ「離して!悠人さん!」

悠人さん?
誰だよ、誰だよそれ。

「櫻井だ、俺は櫻井だぞ」

二宮が落ち着くまで何度も何度も、
俺の名前を言い続けた。

「二宮、落ち着いたか?」

ニ「櫻井さん…」

ギュッと、俺の服の裾を握った。

「大丈夫か?」

背中を擦る。
呼吸のリズムに合わせ、トントンと背中を叩く。

まるで、赤ちゃんをあやすように。

ニ「櫻井さん…俺…」

「寝ろ」

ニ「えっ?」

「とりあえず、寝ろ」

シングルベットを指差す。
寝室は、綺麗にしてるからな。

二宮も文句は言わないだろ。

てか、言えないだろ。
……この状態じゃ。

ニ「…櫻井さんは?」

「ん?片付けしたらソファで寝る」

少しでも安心できるように、
笑顔を作った。

ニ「俺も手伝う」

立ち上がって、俺の手からごみ袋を奪った。

「え……」

ニ「取り乱して…ごめんなさい……」

俺に頭を下げると、部屋に散らばってるごみを回収し始めた。

「二宮」

ニ「はい」

「……住むか」

ニ「え?」

「ここに、住むか?」

何かに怯えてる。
…悠人って人に怯えてる。

そんな人を放っておくなんて、
俺には絶対に出来ない。

憎めないコイツなら、尚更だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ