
エスキス アムール
第22章 彼女のココロ
『彼にはまだ言ったらいけないよ。
逃げられたら困るから。
罪は償わなきゃならないんだ』
その言葉が木霊する。
彼に聞きたいけど、
言ったらいけない。
本当に罪を冒したのなら
償わなければならない。
けれど、
やっていなかったら…?
もし嘘なら、
あそこまでして嘘をつく理由は何?
何年も彼が務めていた会社だ。
今更、そんな嘘をついて
やめさせるなんてあるだろうか。
もうすぐニュースに出る。
あの人はそう言った。
それからだ。
決めるのは。
ニュースに出たら考えれば良い。
その日、
家に帰ると、彼はもう寝ていた。
この人が…、本当に…?
どうか、ニュースに出ないでくれ。
そう願って願って、
その日は眠れなかった。
