
エスキス アムール
第26章 彼の邸宅
掃除機買いに行こ。
帽子とマスクをかぶると、
家電量販店にむかった。
「何かお探しですか?」
「掃除機を探してて。
軽くてよく吸うやつが欲しいんですけど」
「でしたら、これがオススメですねー、」
その店員の説明は
とてもわかりやすくて、
面白かった。
この人はプレゼン向きだなと、
彼の説明を聞きながら思う。
「じゃあ、それで。」
「…え?」
「え?」
「…」
「…」
「あの買ったらいけませんか?」
「ああ、いいえ。
あまりにも
即決だったものですから」
確かに来てから
5分しか経っていない。
でも、特にこだわりはないし
あの広い部屋のホコリを
綺麗に吸い取ってくれれば
それでいいのだ。
何より、彼の説明が
それを買いたいという気にさせてくれた。
「キミの説明がわかりやすくて
面白かったから、買いたくなっちゃった」
そういうと、彼は
驚いた顔をして、嬉しそうに
ありがとうございますと
笑う。
そのまっすぐな笑顔に
目が離せなくなる。
思わず彼のネームを見た。
「もしかして…
大野さんではないですか?」
