
エスキス アムール
第28章 バレンタインデイ キッス
帰り道、百貨店の前には
未だにバレンタインのコーナーが出来ていた。
これが終われば
次はホワイトデーで
売り出すのだろう。
波留くん、
買って行ったらどんな顔するかな。
最強に嫌がるかもしれない。
だけどお菓子だから喜ばれるかな。
でも男の僕がチョコだなんて
重いとか思われるかもしれない。
男が男にあげてんじゃねーよ!!
とか、言われたりして。
それに、もう手は出さないと
決めたばかりだ。
あれから、
おはようとおやすみのキスも、
抱きしめて寝てもいない。
「ただいまー」
「あれ、早かったね」
結局、そのまま家に帰ると、
家の中は甘い匂いで充満していた。
「なに?この匂い」
「ん?デザート作ってた。
今日、バレンタインだろ?」
さらっと、さらっと、言う。
バレンタインだろ?って。
だから、
お前のために作ったってこと?
僕のためにチョコくれるの?!
心が躍りまくっている
僕のことなんて知らずに
彼はキッチンへと戻っていった。
