
エスキス アムール
第28章 バレンタインデイ キッス
「僕は男だぞ。
こんなこと、やめろよ。」
彼の手を振り払えば、
彼はとても驚いてこちらを見つめた。
また、彼に背を向けようと
体勢を変えようとすると、
その瞬間、
彼の冷たい足が、
すっかり熱くなった僕の足に絡まって
それを阻止した。
「…、お前今更かよ」
確かに今更感は満載だ。
セックスもして、
朝晩の頬のキスもして
抱きしめて寝ていた。
本当に今更だ。
だけど、今更でも
今止めなければ、彼を手放したくなくなる。
彼がいなくなることに、耐えられなくなる。
立ち直れなくなるのは、
とてつもなく嫌だった。
じゃあ、この家からいなくならないと
言ってくれ。
そんな言葉も出かかったけど、
言えるはずもない。
だって、彼は僕のことを
そういう対象としても見ていないのだから。
