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エスキス アムール

第28章 バレンタインデイ キッス





「悩みごとでもあんの?」

「…ないけど…」


目にかかった僕の髪の毛を
優しくのけるとそのまま彼の指は
僕の輪郭を縁取った。

カッと顔が熱くなる。
見ていられなくなって

彼から視線をそらした。



「顔、熱い」


いつの間にか、冷たかった足は
温かくなっている。
顔はそれよりもずっと熱い。

こんなんじゃ、
もっと好きになっちゃうからやめろよ。

という思いと


もっと触れて欲しいという
思いが


ぐちゃぐちゃになる。



「話くらいは聞くからさ」


彼の瞳をみると、
また、とても優しい瞳をして
こちらを見ていた。

それはまるで、
彼女を慈しむかのような眼差し。

もしかしたら、
僕を僕としてではなく
彼女に置き換えているのではと
思った。




ズキン、痛む心。







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