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エスキス アムール

第37章 彼を想ふ






「………。」


僕の身体は震えていた。
寒かったからでも怖かったからでもない。


ただただ、興奮していた。
こんなにも人を惹きつける人間がいるのかと。




25歳。


まだ若い。
綺麗という言葉がぴったりのその顔に物怖じせずに語り合う姿。


恐ろしさを感じた。

綺麗なだけじゃない
頭が良いだけじゃない。


なにか彼に関わったら、
一気に引き込まれてしまう。
彼に、溺れてしまう。

直感でそう思うような魅力が彼にはあったからだ。



彼は一通り役目を終えたのか、社長を一瞥して周りをキョロキョロすると、

会場から出て行った。


他の企業への挨拶もそこそこに彼のあとを追う。

すると彼は、大きな窓ガラスから、地上70階の場所で夜景を見ずに空ばかりを気にしていた。


良く耳をそばだてれば


「やっぱ、
見えるわけねーよな……ほし。」


そう、残念そうに呟いている。
そっと彼を覗くとその顔はいじけていた。



可愛い。
今すぐ抱きしめたい。


そんな衝動に駆られる。




だけど待て。

いきなり抱きついたら
変質者以外の何者もない。


物陰から彼を見つめて必死に耐えていると、
彼の背中に声を投げかけた人物がいた。









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