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エスキス アムール

第5章 苦い体験






「見苦しいとかじゃなくて…
大丈夫…?
痛くない?」

手首は容易に想像できるが、
どうやったら
首にそんなに跡が付くんだ?

全く想像できなかった。

俺の
経験不足かもしれないが。うるせーよ




「大丈夫です。
……慣れていますから…。」

そう言った彼女は、弱々しい。
けれど、
それでも営業スマイルを保とうとする彼女に胸が痛くなった。


はるかちゃんは、
笑顔を作りながら
手慣れた手つきで酒をいれていく。


「…っ、」



不意に
その手を掴んで止める。

そうすると、
過剰に肩がビクッと揺れた。



「…」


無理して笑ってたんだ。

本当は男と二人で個室にいることが怖いのに。


昨日と違う、
何と無く元気のない顔、

首や手首についた赤い手の跡。


最初に気がつけば良かった。


酒なんか
作らしてる場合じゃない。



「はるかちゃん、
着替えてきな。」




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