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エスキス アムール

第41章 思わぬ再会





「こちらでお仕事されているのですか?」


そんな俺を気遣ってか、彼女は手を止めて話を進めてくれた。



「あ…はい、まだ働き始めて一年も経ってないですけど」

「いきなりニューヨークで働くなんて大変ですね」

「あ…あの、ちょっと、事情があって…」



そうドギマギしながら返す俺に、彼女はクスリと笑った。


その綺麗な笑顔に息を呑む。
同い年くらいなはずなのに、俺だけが余裕がない状況。
まるで、掌の上で転がされているみたいな感じ。




「よろしければ…座りますか?」



彼女はそう言ってスペースを開けてくれた。
その言葉に流されるように座る。

しっかりしろよ!!
俺!!



「もうこっちに来て長いんですか?」

「もう半年…よりもうちょっと経つかな
私もまだ一年は経ってないんです」


そう言う彼女は少しだけ哀しそうな顔をした。



「会社の人は皆さん日本人の方なんですか?」


話をそらすように彼女は聞いてくる。
あまり自分のことを話したくないのかなと思った。


「皆って言っても俺いれて3人なんですけど…二人とも日本人で、すっごくいい人たちだから最高です」



興奮気味に話すと、彼女はいいなあと声を漏らした。
聞けば一人で来たから、あまり日本人と話す機会もないのだそうで、話せることが嬉しいらしい。


そこで思い付いた。
これだ。



「あの、もし、もしよかったら。
俺の会社に来てくれませんか?」

「え…?」



彼女の絵は素晴らしい。
これと大野さんのデザインとコラボすれば、きっともっといいものができるはずだ。


彼女も絵を見てもらえる機会が増えるかもしれないし、日本人とも関われる。

お互いにいいことずくめだと思った。

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