
エスキス アムール
第41章 思わぬ再会
「き、緊張するな…」
「大丈夫だよ。皆優しいから。」
彼女と大野さんたちを会わせる金曜日、
彼女は緊張して顔が強張っていた。
だけど、話したらこんな緊張もすぐに吹っ飛ぶだろうと、心配はしていない。
俺もそうだった。
大野さんも要さんも木更津さんも。
気を遣わせない雰囲気を作る天才だと思う。
大野さんに関しては、木更津さんのことでからかえるほど信頼関係もできている。
日本を飛び出してニューヨークに来ても、楽しくやっていられるのは彼らのおかげだと、本当に感謝している。
「ねえ、あの…社長さんともう一人の方のお名前って…」
「ああ、言ってなかったね。
大野さんと高橋さんだよ」
「……っ」
「…どうかした?」
多分、高橋さんじゃない。
大野さんの名前をもらした瞬間、彼女の顔が少し青くなるのがわかった。
「大野さんって…」
「…なに?」
「ううん、何でもない」
彼女の様子は、おかしかった。
この間話してくれた、あの特別な人と関係しているのだろうか。
「まさか、そんなわけない…」
止まってしまった足を進め、彼女を促した瞬間、彼女から小さな声でもれたそんな言葉が聞こえた。
彼女はそんな声が自分からもれたことすら、気がついていないだろう。
そんなわけないって…どういうこと?
聞きたいことはたくさんあるのに、聞けなかった。
はぐらかされるのはわかっていたから。
焦らなくていい。
期間をかけて彼女のことを知っていけばいい。
だけど…、
いつの間にか、俺の頭の中は彼女でいっぱいになっていた。
仕事をするときも休みの日も、彼女で頭がいっぱいだ。
どうして知りたいと思うのか、
どうしてこんなに彼女のことを考えているのか、
どうして、彼女のことがわからない度にこんなにも焦れったくなるのか、心がざわつくのか、
この気持ちの名称が何なのかわからないまま、モヤモヤとした気持ちをごまかす日々が続いていた。
