
エスキス アムール
第41章 思わぬ再会
「俺?俺は嫌じゃないよ。全く!」
そう言って彼は笑った。
嫌だったら来て早々断ってるよ、と。
ホッと少しだけ安心するのと同時に、その笑顔を見てわかった。
私の思い違いなんかじゃない。
距離を感じるのは、笑い方が違うからだと。
ふにゃりと笑っていたあの頃の笑顔はそこにはなく、
大野さんは爽やかに白い歯を見て笑うだけだった。
まるで、外向きの顔を見せられているような感じ。
あのふにゃりと笑う笑顔は、彼が心を許した証だったことに今更ながら気がついた。
だとしたら、彼は結構最初の方からあの笑顔を私に向けてくれていた。
何でもっとそのことに早く気が付かなかったのだろう。
そしたらもっと…、
いや、いつから付き合い始めようとも、きっと私たちの関係は同じだった。
何度繰り返したって、私は馬鹿だから同じことを繰り返してしまうに決まっている。
これからはきっと、仕事仲間として見られる。
そしたらあの笑顔をもう見ることができないのだと思うと淋しくて仕方がなかった。
それもこれも、そんな風にしたのは自分自身で。
自業自得だ。
「お仕事…、受けさせていただきます」
「本当に?!ありがとう!高峰も喜ぶよ」
また彼は笑うけど、ふにゃりとは笑わない。
爽やかな笑顔だ。
見ていられなくなって、視線を逸らす。
「あ、の…大野さん」
「何?あ、報酬のことだったら今度ちゃんと見積もりを…」
「ち、違うんです。そうじゃなくて…
仕事のことじゃなくて…っ」
言わなきゃ。言わなきゃ。
頭の中で自分の声がこだました。
「大野さん、ごめんなさい…っ」
喉から絞り出したその言葉は、掠れて聞こえたかどうかもわからないような声だった。
