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エスキス アムール

第41章 思わぬ再会





「はるかちゃんの絵は俺も好きだよ。
高峰も本当に熱心にはるかちゃんの絵の魅力について語ってたんだよ。

上手くいくかはお客さんが決めることだからなんとも言えないけど、やる価値はあると思うんだ。

それに…、高峰が初めて提案した案なんだ。
なんとか実現してやりたくてさ」


もちろん、やる価値がなければ実現させようとも思わないよと彼は付け加える。



色恋沙汰で落ち着かない私と違い、
仕事の話を懸命にする大野さんを見て、

今、彼が相手にしているのは、
元恋人の池内はるかではなく、
高峰さんによって紹介された池内はるかなのだということに気が付いた。



優しく笑いかけてくれているのに、あの頃とは全然違う。

何でこんなにも距離があるように感じるのだろう。



彼が距離を置いているのだろうか。
それとも私が勝手に感じているだけだろうか。

私が勝手に感じているだけだとしたら、その原因は何だろう。


私の思い違い?
考えすぎ?




「だから、もしはるかちゃんが良ければ、デザインに協力してくれないかな?」

「……、」

「…はるかちゃん…?」

「…あ…、」


考えすぎて、上の空だった私は名前を呼ばれてようやく気が付く。
喉の奥から掠れた声がもれた。



「良ければ、うちの会社に協力してくれないかな?」



もう一度言われたその言葉に少し悩む。
絵を描かせて貰えるのなら何処へでも行く。


だけど良いのだろうか。
そんなこと。

大野さんは嫌じゃないのだろうか。



「あ、の…大野さんは……、」

「ん…?」

「大野さんは…嫌じゃないですか…?」








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