
エスキス アムール
第42章 僕のシルシ
「痒い。背中…かゆい…」
波留くんはあまり肌が強くない。
少し指で引っ掛けば、直ぐに線上に腫れて痒くなったりする。
キスマークをびっしりと背中につけたあと、
赤く蚊に刺されたように点状に腫れて、痒い痒いと声を漏らした。
それに僕は苦笑して、背中に腕を回して掻いてあげる。
「もう少し下。あ、やっぱり上、あ、横」
「どこだよ。わからないよそんなに言われたら」
「そんなにつけたのは木更津でしょ?!」
ごもっともです。
また苦笑する。
直接掻くと、爪で引っ掻いて痕が出来てしまうかもしれないから、Tシャツを着せてあげた。
上から撫でてあげると、気持ち良さそうに目をつむる。
「波留くんは誰のもの?」
「…木更津…」
「そう。いいね?忘れたらいけないよ?」
もう一度念を押して聞いて、
思い切り、鎖骨の所に吸い付いて痕を残す。
「あ…っ、ちょっ、見える所はやめろよ!」
「首が詰まったの着て行けばわからないよ」
むくれた顔をする彼の頬をつつく。
これで僕の気が晴れたわけでもないが、解決策としたら彼の心が僕から離れないように、日常的に確認していくしかない。
あやすように背中を撫でていると、
波留くんモゾモゾと動いて僕を見た。
「ね…俺は木更津のもの?」
「そうだよ」
「じゃあ木更津は俺のもの?」
「それはどうだろう」
「……意地悪」
より一層むくれた顔をした波留くんは、僕の鎖骨に痕を残す。
舌を首に這わせると、上まで上がってきて頸筋にも痕を残した。
おいおい。
人のこと言っておいて、自分が一番大胆じゃないか。
僕が彼を少しだけ睨むと、波留くんふにゃりと笑う。
「ね…きさらづ…」
「ん?」
「かゆい…」
