
エスキス アムール
第42章 僕のシルシ
「おいで」
波留くんの手を引いて寝室に向かう。
彼は困惑した顔をして、抵抗することなくついて来た。
「脱いで」
一言だけ言葉をもらすと、彼は一層困惑した顔になる。
僕の誕生日の日のことを思い出しているのだろうか、
少し怯えたような面持ちになって、軽く首を振った。
「全部じゃなくていい。上だけ。」
そう言って、自分自身も上のTシャツだけ脱いで半裸になった。
それを見て、少しだけ安堵の表情を浮かべると、ゆっくり脱いで綺麗な身体が姿を見せる。
「おいで」
ベッドに横になって彼を呼ぶと近くによって来てそっと潜り込んで来た。
その手を引き寄せて、身体を密着させると背中に腕を回す。
素肌が触れ合うのが心地よくて、体を摺り寄せると、波留くんも気持ちがいいのか額を僕の頸筋にすりつけてキスを落とした。
僕の身体に腕を回そうとしたので、その手を絡め取って拒否をすると、途端に顔の色が失われる。
それを無視して彼から身体を離し、うつ伏せに波留くんを押さえつけた。
彼は恐怖を感じたのか、身体をこわばらせて少しの抵抗を見せる。
「大丈夫。ひどい事はしないから。」
優しくそういえば、抵抗を見せた身体は力が抜けて脱力する。
けれども警戒心は解けないのか、その身体は縮こまっているように見えた。
「波留くん、」
「…」
「波留くん…?」
「…な、に…?」
「波留くんよく覚えといて。
波留くんは、誰のものなのか」
そう言うと、露わになっている彼の背中に印をつけて行く。
まずひとつ、強く吸い付くと、彼の背中が綺麗に仰け反ってびくりと反応した。
「波留くんは、僕のものだよ」
「…んっ…ぁ…」
「誰にも渡さない」
「う…や、…っぁ」
「どこにも行かせない」
「ふっ…ん…」
「絶対に離さない」
「あぁ!…い…っ」
僕は一度チャンスを与えたんだ。
だけど、それを振り払ってここへ来たのは波留くんなんだからね。
夢中になって、
気がつけば彼の背中は花が咲いたように、
一面真っ赤な印がびっしりとついていた。
