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エスキス アムール

第43章 だから言ったのに。





要にはまだ木更津のことは言っていない。
だから、誤魔化すしかなかった。



ふと、高峰の方を見てみれば、ニヤニヤとしながらこちらを見ていた。

高峰の予想は恐らくあたっているのだけど、ここで変に反応してしまえば要に勘付かれる。


とりあえず無視をして、
パソコンに向かった。


そうこうしているうちに、就業時間ジャストだ。





「よし!俺はもうあがるね!
要は?どうする?」

「俺は今日まだ残ってく」

「OK。高峰もそれ終わったら適当に帰っていいから」

「はい。了解です!」

「はるかちゃんもね、好きな時に帰っていいよ」

「あ、はい…!」



鞄を引っつかんで慌てて会社を飛び出す。
今日朝会っているのに。
というか、毎日会っているのに。

楽しみで仕方がない俺は、走って待ち合わせ場所に向かっていた。



あ、走ったら汗が。
そう思ったときにはもう遅い。

だいぶ走った。
汗もかいた。


まあいい。
どうせ簡単な格好なんだから、ドレスコードがある場所にはいかないだろう。


待ち合わせ場所に着くと、まだ木更津は着いていなかった。
今どこらへんか聞こう。


鞄から携帯を取り出そうとして気が付く。



「…携帯忘れた…」



急いで出てきたものだから、
何も入れずに財布だけ持って出てきてしまった。

他の物は全部机の上だ。



なんで俺こんなに夢中になってんだろう。
自分の必死さに苦笑して天を仰いだ。






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