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エスキス アムール

第43章 だから言ったのに。

【要side】





「…わかりやすいな」

「ハハハ、本当に」




嵐のように扉も締めずに出て行った波留に、苦笑した。

独り言で呟いたつもりだったが、それに高峰が反応する。


こんなに付き合いが短いやつでもわかるんだから、波留は相当わかりやすいのだろう。



それにしても、ニューヨークに知り合いなんていただろうか。


三村相手だったらあんな風にはならないだろうし、その前に三村相手に飲むんだったら、俺も誘うはずだ。


なにか、新しい取引先でも見つけたのだろうか。

それはありえない話でもない。


あいつは仕事のことになると周りのことが見えなくなるから、契約を取ってきて事後報告なんてことがあってもおかしくないはずだ。


けれども、あいつの仕事に関する勘みたいなものは野生の動物のように鋭くて、安心して任せていられる。

彼の仕事スタイルに口を出すつもりはなかった。



それにしても…、仕事かあ?
何なんだ?
あのウキウキしている感じ。
そわそわしている感じ

恋してますみたいな…



恋…?



「まさかな…」

「何がですか?」

「いや、こっちの話。」




少し離れたところで、絵を描いているはるかちゃんを見ながら、一瞬考えたことを否定した。


こっちに来る前、好きな人が他に出来たといっていたけど、あれから何も言ってこないし、何もしないまま、ニューヨークに来たのだろう。


こっちにきて、こうして彼女と再会したわけだから、恐らく、気持ちが波留に戻るのに、そう時間はかからないものだと思っている。




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