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エスキス アムール

第44章 木更津の思惑 *





「波留くんどうしたの?
帰って来ないと思ったら、こんなところに座り込んじゃって」



あたかも、今来て見ましたみたいな顔をして、小さく蹲って動かなくなった彼に声をかけた。

そうすると泣きそうな顔をした顔が僕を見上げる。
目があった瞬間、波留くんは僕に抱きついて来た。




「木更津…!木更津!…木更津…」




ひたすらただ名前を呼んで、頸筋に頭をすりつけてくる。
その頭を撫でてやれば少し落ち着いたようで、僕の瞳を見つめ、キスを求めた。

きっと、彼は今混乱している。
混乱しているからこそ、自分の思っていた答えがあっていると信じたくて、目の前にいる僕を求めている。

僕がキスをすれば、彼女を忘れられると思っているのだろう。
最もそのことに自分で気がついているかどうかはわからないけど。




「どうしたの、波留くん」



知っているのに惚けながらも、彼にキスをしてあげる。
僕って波留くんを甘やかしてるなと思う。



「波留くんは誰のもの?」

「木更津…」

「そう、良い子だね」



優しく褒めて抱きしめると、彼は僕の背中にまわす腕に力を込める。
安心したからか、身体の力が抜けていくのがわかった。



波留くん好きだよ。


だから、君を甘やかすばっかりはもうお終いだ。



僕を頼って彼女の存在を消すのはやめよう。
君の心から彼女を抹消して、僕のところへ来てくれ。


泣き出しそうな彼を部屋へ促すと、ベッドへ押し倒した。








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