
エスキス アムール
第47章 教え込まれたカラダ
大野さんみたいにバリバリ企業で働いている人ならともかく、私が企業情報をチェックしているわけがない。
木更津さんがどこに事業所を展開して、どこに住んでいるかなんて、私が知っているの不自然なのに。
馬鹿な事を言ってしまったと、後悔した。
「あの…あの…、大野さんが起きるとき…きさらづって名前…呼んでたから…」
観念して、その事だけ途切れ途切れに告げると、彼はハッとした顔をして目を泳がせる。
わかりやすい。
私の考えすぎではなかったようだ。
彼の表情で、疑惑が確信に変わった。
「…そう…」
彼は一言漏らすと、また咀嚼を続ける。
「…付き合ってるんですよね」
静寂が訪れた部屋に、今度は私の声が響いた。
その声にピクリと彼の眉が動く。
肯定がくるとすっかり思っていたけど、大野さんから帰ってきた言葉は、思いがけない返答だった。
「どうしてそうなるの」
こんなにわかりやすいのに、この後に及んでまだ誤魔化そうとする彼に苛立った。
そうしてそうなるのって…、
今の反応と、イニシャルと名前が一致しているんだ。
これで付き合っていなかったらおかしい。
私が黙り込んでいると、彼が言葉を続けた。
