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エスキス アムール

第50章 甘えたい甘えられたい




熱を出したって行こうとするのに、俺のために初めてのドタキャンをしてくれたことを知って、嬉しくなってにやけていると、ギロリと睨まれる。


おまけに、木更津がタカと呼んだからタカさんと呼んだのに、あのお笑い芸人みたいだからそんな風に呼ぶなとまたネチネチ言われる。


じゃあお前の名前は何なんだと聞きたくなったけど、何を言っても良く返してくれそうに無かったので口を噤んだ。



「ちょっと僕トイレに行ってくるね。
タカ、いじめちゃダメだよ波留くんのこと。」

「ふん」



そう言って、木更津が出て行くなり、彼は俺のことを上から下まで見てくる。

いじめない気はなさそうだ。
そう思って、構えていると彼は足を組んで聞いてくる。




「きみ、いくつなの?」

「…28です」

「ふーん、へー、年下ねー、」



あまりいい気はしなかったけど、木更津の大事な幼馴染だし、あまり揉め事は起こしたくない。


木更津への態度を見る限り、優しい人なのは伝わって来るから、俺が木更津との食事を邪魔したことが本当に嫌だったのだと思う。


それが原因なら、仕方がないと気に入られる事は諦めた。



――――――が、次の瞬間、俺はとてもショックなことを彼から告げられることになる。






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