
エスキス アムール
第50章 甘えたい甘えられたい
「…ん…ん、ん」
触れては離れ、離れては触れ。
その繰り返しを続けて、また、離れたとき。
ゆっくりと木更津の瞼が開いて、目が合うと、木更津は微笑んで可愛いと呟いた。
「どうしたの。今日は積極的だね」
「……」
「どうしてさっきから話さないの?」
「……っ」
今は隆さんの言葉で不安になっているから、木更津のことが好き。しか言えなさそうで。
好きと言い出せば、甘えてしまうのは分かっていた。
だから、なるべく何も言わないようにしていたのだが。
それがおかしいと思われたようだ。
「さっきのことだけど。」
木更津は体勢を変えないまま、俺の頬に触れて言葉を紡ぐ。
「甘えるとか甘えないとか、何?
タカに言われたんでしょ?
波留くんが言わなくたって、タカに聞けばわかるんだよ?」
やっぱり気付かれている。
さっきの今であからさまだから、それは仕方が無いけど、少し言うのは渋った。
けれども、隆さんに聞けばばれてしまうのもまたそうだろう。
黙っていても意味はないことくらい、理解はできた。
