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エスキス アムール

第50章 甘えたい甘えられたい




「……ぁ、…う…」

「なに?」


微かに聞こえたその声に、足を止める。
振り返ってみると、まだ顔の赤みはまるで引いていなかった。


彼は自分のなかの何かと必死に戦っているようだ。




……可愛いなあ



「あ、あの……」

「……」

「……こ、」

「こ?」


一文字目を口から紡いで、そこで固まる。
もう、可笑しすぎて笑ってしまった。

けれども、その笑いに気が付いていない。
気が付いているのかもしれないけど、それに突っ込む余裕がないのだろう。




「波留くん?」

「……ぅ、あ、あの…」

「うん?」




「…す、すき……こー、へい……」



「……、」




ああ、やられた。
名前を呼んでっていっただけなのに。

それは何て言うか不意打ちだよね。



「……え…あ…?まっ、だ、め明日はや……」

「うん、早いよね。でも止めるのも無理」

「ち、ちょ…ッき、ぁ……こ、こーへい…」


波留くんを抱き上げてすぐ側のベッドに投げるように押し倒す。
木更津と言いかけて、名前で言い直すとか、可愛い。


「波留くん、好きだよ」

「……お、おれも……っんん」




明日は早いけど、今日は寝かさないって決めた。
また、タカを連れてくるのもアリだなと思う。


僕は笑いながら、波留くんに深く深く、口づけた。






第四章ー終

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