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エスキス アムール

第52章 第二の木更津

【波留side】





「じゃあ、これで一段落かな」

「ああ、そうだな」

「ちょっとお手洗い借りていい?」

「あ、どうぞ。そこ、左行ったところだから」

「ありがとう」



綺麗な動作で書類を片付け、ゆっくりと立ち上がる。
そして、ありがとうと微笑み歩いていく。


その姿を目で追っていた。



「…大野さん?大野さんっ」

「…ぁ、ああ、なに?」



正確には、高峰が呼びかける声で、目で追っていたことに気がついた。

慌てて目をそらすけど、もう遅くて。高峰はニヤニヤとしながら、こちらを見ていった。




「矢吹さん、似てますよね。
…木更津さんにっ」

「ば!!!…か…っ声が大きいよ…っ」



慌てて口を塞ぐ。
顔が熱い。

要に悟られまいと、平常心を保とうとするけど、多分気がつかれている。

どうも木更津のことを持ち出されると、調子が狂う。



冷水を流し込んで、ため息を吐いた。








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