
エスキス アムール
第54章 仲直りしよう
仕事が終わって、どんよりしたまま、帰路に着いた。
どうせ今日は木更津はいないし。
ひとりで寂しく夕飯を食べるのなら、外食でもしようと、駅前を歩いている時だった。
「波留くん?」
「…、」
その声に一瞬ドキリとする。
…でも、木更津じゃない。
第一俺たちはいま喧嘩中で、木更津は出張だ。
…と、言うことは。
「矢吹…」
振り向くと、案の定、矢吹が立っていた。
まずい。
木更津の出張中に、早速二人きりになりたくない。
「波留くん何してるの?」
「…帰るところ。」
「…よかったら一緒にご飯食べない?」
まずい。
ここでイエスというわけには行かない。
矢吹はそんなつもりで誘っているわけではないとわかっているけど、
わかっているから、本当なら行くと言っているところだけど。
木更津に宣言したばかりだ。
「ごめん…今日は…」
そう言いかけて、矢吹が持っている封筒に目がいった。
「…病院…?」
